秋の夜長。
夜が長くなった。
肌寒さを感じながらも
ふらっと散歩に出る。
近くの公園の池の周りをゆっくりと歩く。
ギターの練習をする音や
マラソンをする人達の足音や
若者達の話し声や
虫の音が耳を騒がす。
月明かりが池の水面に
ゆらゆらと映し出され歪んだ光を放つ。
空いているベンチに腰掛け
秋の夜の空気をゆっくりと吸い込んだ。
もうすぐ公園の木々が色付く。
この公園の紅葉を見るのも今年が最後だ。
来月から新居へ引っ越す。
新居の周りにはこんなに大きな公園はない。
その代わり大都会の夜景を一望出来る。
僕は夜、自宅にいる事が増えるだろうから
夜景の美しさにも拘った。
君の事を考える時間も少なくなるだろう。
人工的な輝きは美しいけれど
それ以上でもそれ以下でもない。
君を思い出さずに済む。
僕は闇夜に身を隠して、気持ちを失う。
それを切に望んでいる。
この関係を変えない為にも。
君の笑顔を長らく見守る為にも。
僕の命が尽きるまでは、どうか。