観察98日目。
君用のカフェラテと自分用のエスプレッソを運ぶ。
君の隣に座るのは気が引けたので、
君の目の前にスツールを運んで座った。
「なんか急に大人になっちゃった気がする」
「そうか?全然変わらないけど?」
「そうなんだけどぉ、なんかこう言うの見慣れてないからかも」
ソファの上でクッションを抱えたまま体育座りをし
ぎゅっと顔を隠す。
そんな仕草が可愛らしくてどきりとした。
僕は照れ隠しに、料理の話をして誤魔化す。
今度手料理を食べさせてよねって思い出したように君は言う。
その今度は、きっと来ない。
だって僕はもうすぐここからいなくなる。
君から遠く離れて行く。
そしてこの気持ちもゆっくりと打ち消すつもり、だ。
だからもう少しだけ、僕の目の前で笑っていて欲しい。
君の幸せを心から全力で願える存在に戻る為にも。
演じている僕では駄目なのだ。
本来の僕に戻らなければ駄目なのだ。
この気持ちを消し去らなくては、
君にとって相応しい立場の僕になる事が出来ない。
だからもう少し、だけ。