好きな人をただ観察するだけの日記。

好きな人をただ観察するだけ。

観察85日目、その1。

時は少し遡ってしまうのだけれど、

十月の最終の週末。

君の学園祭へと向かった。

生憎小雨交じりでいい空模様ではない。

君は午後から野外ステージで

ファッションショーのモデルを務めると

言っていたのでこの天気じゃもしかしたら

雨天中止になるかも、なんて言っていたね。

校門が近付いてくると、学園祭らしい

どこかで見たアニメキャラを模した看板や

着ぐるみやコスプレをしてビラ配りをする者や

微かに聞こえる軽音楽や人々の騒めきが

目を耳を刺激する。

なんだかテンションが少し上がるけれど

ぼっちで来ているのは僕くらいだろうか?

なんて思っていたけれど、割といるので

少し安堵し、校門を潜る。

凄く懐かしい感覚が身体にすうっと入って来た。

自分の大学の学園祭を思い出したのだ。

懐かしさと高揚感で胸が熱くなる。

僕はゆっくりと校舎を一通り回った後、

君の作品が展示してある体育館へと向かった。

一つずつ作品名と作者を確認し、見て回る。

終盤に差し掛かる頃、見覚えのある名前を発見。

な、なんだこれは…?

硝子で作られた大小無数の玉に

赤と黒の色がつけられ、正方形の白い箱に

びっしりと収められていた。

作品名「共鳴する叫び」

…普段の君からは想像も出来ない程の

アーティストな一面を見た。

暫く眺めた後、それを写真に撮って保存した。

のんびりとしていたら、正午を過ぎていた。

やばい、ファッションショーまで後少しじゃないか?

などと思い、屋台で軽く食事を済ませて、

屋外の野外ステージへと向かう。

外に出ると太陽が顔を覗かせている。

よかった…中止のアナウンスもない。

君の晴れ舞台が台無しにならなくてよかった。

早めに席を取ろうと思って急いだので

ラッキーな事にステージ中央に近い席に座れた。

座ったはいいが、なぜか僕も緊張する。

君にはここにいる事を知らせていないから

見つかってしまったら怒るだろうか?

なんて今更ながらに考えてしまっていた。

暫くしてファッションショーの始まりの

アナウンスと大音量のダンスミュージックが

流れ出す。

オープニングアクトはダンスグループによる

演目のようだ。

僕はそれを流し見しつつ、

本編のファッションショーに向けて

胸の高まりと緊張を隠すように深呼吸した。