好きな人をただ観察するだけの日記。

好きな人をただ観察するだけ。

観察85日目、その2。

ダンスが終わると、今度はテクノポップ調に

流れる曲が変わる。

色とりどりの奇抜なデザインの洋服に

身を包んだクールなメイクを施した女の子達が

自由にウォーキングしては観客に手を振って消える。

胸には番号札をつけている、観客から点数を貰って

競うタイプのファッションショーなのだ。

僕は君がいないかキョロキョロと目を泳がせて探すが

全然見当たらない。

メイクが奇抜であっても君を見落とす訳はない筈だ

と思いながら探すけれど一向に見つけられない。

一通りランウェイを歩いた後、

色とりどりの奇抜な衣装を纏ったモデル達は

一斉にステージ中央に立ち、お辞儀をして去ってしまった。

君はどこにもいなかった…

僕が見落としたのだろうか?そんなまさか。

少し落胆していると、ステージから今度は

パッヘルベルのカノンが流れる。

僕はこの曲が凄く好きなので、つい反応してしまう。

ステージに目を移すと、今度は真っ白いドレスと

ヴェールを纏った女の子達がゆっくりとランウェイを歩いていく。

今度こそ見落とさない様にと凝視する。

というか…この衣装、ウエディングドレスじゃないか?

嘘だろう?まじかよ?

鼓動が急に早くなった。

まさか、そんな、急に、こんな…

鼓動とは裏腹に目はステージに釘付けだ。

だけれど一向に君は現れない。

いや、今なら現れなくてもいいなんて思っている。

だって、そんな、急に、そんな姿…

そしてカノンも終盤に差し掛かった頃、

君はステージに姿をみせた。

ティアドロップを逆さにした様な薄い膜のヴェールに

重厚感のある幾重にもオーガンジーを重ねた様な

後ろが凄く長いロングドレスだ。

太陽の光を浴びるドレスは

キラキラと美しく純白色を放つ。

僕は半分夢見心地で君を見つめた。

君のその姿を見るのは

もっとずっと先の事だと思っていたのに…

こんなに早く見てしまうなんて。

そしてステージ中央に立ち、

観客席へブーケを投げ込む。

僕は咄嗟にそれをキャッチしようと

手を伸ばしたけれど届かなかった。

その時、君と目が合ってしまう。

君は僕を見つけて少し驚いた顔をしたけれど

小さく手を振ってくれた。

ああ、何やってんだ。

見つかってしまったじゃないか。

なんでブーケなんて取ろうと思ったんだ。

馬鹿か、僕は。

恥ずかしさと、緊張と、嬉しさで

感情がぐちゃぐちゃだ。

まさかこのステージのフィナーレを飾るのが

君だったなんて思ってもなかったし。

教えてくれなかった訳がそれで分かった。

恥ずかしいから嫌だって言っていたもんな…

なのに僕ときたら、こんな失態を。

暫く茫然自失したまま、座りこけた。